ある日、イギリスのクラシック音楽誌 Music Magazine のサイトをなんとなく見ていたら、面白い記事を見つけました。
タイトルは
「How to programme the perfect concert」
(完璧なコンサート・プログラムのつくり方)
ヴァイオリニストのフェネッラ・ハンフリーズさんが、
「どんなふうにして演奏曲を選んでいるのか」
というプロセスを紹介しているお話でした。
そういえば、
プロの演奏家がどうやって曲を選んでいるのかって、意外と知らないな・・、
と思いつつ、読んでみたら面白くてシェアしたくなりました。
読んでみて、曲を選ぶということが、すごく繊細な感性と知的さ、そしてもちろん、興行的な要素のバランスが求められる作業なんだなと感じました。
そしてコンサートに行く側のである私にとっても音楽の見方がちょっと変わるようなお話でした。

プロ演奏家のコンサート・プログラム作りとは?
まず、フェネッラさんは、プログラム作りを
「少しずつ違った“ダンス”を踊るようなもの」と表現していました。面白い表現かつ、ちょっとミステリアスな表現ですよね。
それはなんでかというと、室内楽や無伴奏のプログラムになると、
主催者の好みや要望と、自分自身のアイデアとのあいだで、バランスを取らなければいけないからだそうです。
また、昔の作曲家と現代の作曲家の曲を並べて、時代を超えたプログラムを作ることもあるそうです。
また、びっくりしたのは、フェネッラさんが演奏会場(ホール)のアーカイブ(過去の公演記録)遡って、100年前に演奏された曲を再発見することもあるということ。
その中で、忘れ去られた名曲を現代に甦らせることもあるそうです。

ヨーロッパでの名門ホールでは、100年以上にわたるアーカイブが残っているようで、演奏家はそこから“かつて演奏された曲”を探し出し、今の時代に再び演奏をことができます。
日本ではまだ歴史的なホールのアーカイブ文化が少ないので、
ヨーロッパならではの選び方と言えますね。
そう思うと、プログラム作りは、ただの選曲ではなく、音楽の記憶を未来へつなぐ重要な作業なんだとも思います。
また、彼女によると、今の聴衆は、新しい音楽にもとても前向きで、知らない曲でも「聴いてみたい」と思う人が増えているそうです。有名な曲と、知られていない曲とのバランスも重要なのだそう。
さらに、日本でも良く聞くテーマですが、作曲家の生誕○年といった“記念イヤー”も良いヒントになるそうです。
例えば、フォーレの記念年の場合は、ラヴェル(フォーレの弟子)ように、関係する作曲家を組み合わせることで、音楽の世界をより深く味わえるコンサートになるとのこと。

そして、この記事を読んでいて、ピアノ学習者にとっても、
練習のヒントになる面白い視点があると感じました。
演奏家がコンサート全体を物語として組み立てるように、
私たちも“自分の1年”を音楽でデザインしてみたらどうだろう――
そんな発想が浮かびました。
季節をテーマに、自分だけのリサイタル曲目を作ってみよう

ピアノの練習のモチベーションを上げるきっかけとして、「何の曲を弾くか」というのはとても大切ですよね。
普段は、自分のレベルや先生に提案された曲を弾くことが多いと思います。
学習の途中や初心者のうちは、それが自然な流れです。
でも今回は、そこから少し離れて、自分の意思で曲を選んでみようという提案です。
そして、ちょっと先に進んで、能動的に「この曲を弾こう」と決めて、自分だけのリサイタル曲目を作ってみるのはどうでしょうか。
たとえば、ちょっと変わった例かもしれませんが、季節によって限定のお菓子や新作ドリンクが出ると、なんだかワクワクしますよね。
そんなふうに、季節に合わせて1曲選んでみるというのはどうでしょう?
日本には春・夏・秋・冬の四季があります。
つまり、1年に4つのテーマがあるということ。
春だったら、春を感じる明るい曲。
夏は涼しげな曲。
秋はしっとりしたワルツ。
冬はクリスマスにちなんだ曲を・・という感じ。
今は11月の初め。ちょうど冬へ移る季節ですね。
今の時期なら、やっぱりクリスマスに関する曲を選ぶのが一番取り入れやすいかもしれません。
そして、1年は12ヶ月なので、季節ごとに分けると3ヶ月ずつ。
つまり、3ヶ月で1曲仕上げるというサイクルになります。
期間が決まっていると、「この3ヶ月でこの曲を完成させよう」という目標ができるし、季節の空気と一緒に練習できるので、気持ちも前向きになりやすいと思います。
そして、1年間で4曲仕上げたら、それだけで立派なレパートリーです。
春・夏・秋・冬の曲を並べて弾けば、自分だけの小さなリサイタル曲目が完成します!
また、曲を選ぶって、ちょっと難しいところもありますが、これも一つの良い経験になると思います。
そして、発表会がなくても、季節ごとに1曲ずつ仕上げていくことで、音楽と自分の生活が自然とリンクして、生活にも張りが出そう・・、と思います。
今回は、そんなちょっとワクワクできる練習のアイデアを提案してみました。
何かのヒントになれば嬉しいです。




