楽典と音楽理論の違いとは?日本と海外の学び方の差と、私の体験から気づいたこと

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先日、職場で音楽が好きな上司と話していたときのこと。
私が「最近、音楽理論を勉強してるんです」と言うと、
「ああ、楽典をやってるんだね」と、さらっと返されました。

一瞬、「あれ?楽典と音楽理論って、同じものだと思われてる?」と気づいて、
そこから、ちょっと不思議な違和感が残りました。

たしかに、音楽にあまり詳しくない人にとっては、
「楽典」も「音楽理論」も、一つの“音楽の勉強”として
ごちゃっとひとくくりにされがちです。

でも、実はこのふたつ、似ているようでしっかり違うものなんです。


楽典ってなに?どんな内容?

まずは、楽典(がくてん)についてです。
簡単にいうと、音楽の“読み書き”のルールを学ぶことです。
例えば・・、

  • 音符の長さ
  • 拍子や調号
  • 楽譜に出てくる記号の意味

といった基本的な知識を学ぶのが楽典です。

たとえば、地図を思い浮かべてみてください。
いろんなマークや記号があって、それぞれに意味がありますよね。

目的地にたどり着くには、それらの意味を知って、正しく読み取る必要があります。
楽典というのは、それと同じ感覚です。

音楽の世界にも、「♯」「♭」「𝄐(フェルマータ)」など、
たくさんの“記号”や“ルール”があります。
楽譜という地図を正しく読みながら、音楽を奏でるために、
楽典の知識は必要です。

また、楽器を弾く(実技)以外の
最初の学習の入り口として学ばれることが多い内容です。


それでは、音楽理論ってなに?

一方、音楽理論は、音楽のしくみや構造を理解するための学習です。
具体的には以下の

  • コード進行(和音が順番に流れていく道すじ)
  • 和声(和音とその組み合わせやその役割などを考えること)
  • モチーフ(曲の中で何度も使われる、短くて印象的な音のかたまり)など・・です。

音楽理論は、こうした要素を勉強して、「音楽がどう出来ているか」を読み解きます。
そして、作曲やアレンジにも関わってくる、もう少し応用的な内容です。

また、まとめると、
楽典が「ひらがな・カタカナ・漢字」なら、音楽理論は「読解力と作文力」のようなもの・・とも言えます。


比較してみると、こんな感じ

内容楽典音楽理論
主な目的楽譜の読み書きのルールを学ぶ音楽のしくみを理解・分析する
難易度基礎的応用的
例えるならひらがな・カタカナ・漢字読解・作文・構文

海外ではどちらもまとめて「Music Theory」

ところが、海外──特に私が留学していたイギリスでは、
「楽典」と「音楽理論」を分けるような考え方はあまりありませんでした。

私が知る限り、楽典という言葉はなく、すべて“Music Theory(音楽理論)”という言葉で統一されていて、初歩的な内容から応用的な和声や分析まで、段階的にひとつの流れとして学ばれていました。


イギリスで「音楽理論」がひとつにまとまっている理由、私の体験から

ちょっと、話はそれますが、イギリスでの音楽教育について少しお話ししたいと思います。
イギリス滞在中に、少し驚いたのが、「音楽の学び方」や「評価のされ方」が、日本とはずいぶん違うということでした。

一番、大きく違うなと思ったことは、イギリスの大学では、入試や進学に「Aレベル」や「GCSE」などのポイント制があり、音楽もそのひとつの教科として、きちんと評価対象になっていたことです。

音楽の成績は「楽譜が読めるかどうか」だけではなく、
和声や楽曲分析など、わりと深い内容まで試験に含まれていることもあります。

ここでは、音楽大学に行かない人でも、上級の音楽理論を学んで試験に合格すれば、
進学や評価にプラスとして反映されるという仕組みなんです。

そのせいか、イギリスでは
「楽典」と「音楽理論」のように基礎と応用を切り分けて考えるよりも、
すべてまとめて**“Music Theory”**として、段階的に学んでいくのが普通の感覚のようでした。

日本では「音楽理論」という言葉を使う人、学ぶ人は音大や専門的な場に限られていて、
一般的には、いわゆる「楽典」の内容を学んで終わり・・という状況が殆どです。

なので、イギリスの大学評価システムのように、音楽をひとつの“評価される力”としてとらえている社会では、「楽典=基礎」「理論=応用」といった分断的な枠組みではなく
“Music Theory”としてひとつの科目としているのではないか・・と思います。


日本ではなぜ分かれているのか?

調べてみたら、どうやら明治時代以降の教育制度に関係しているらしいのですが…そのあたりをきちんとまとめるのはちょっと大変だったので、今回は触れないこととします・・。(すみません・・。)

他の要因としては、現在の学校教育では、音楽が一般の大学入試に有利に直結するケースがほぼないからということが大きいと思います。

そのため、「楽典=一般的に基礎の人が学ぶもの」「音楽理論=音大レベル」
というように、自然と分かれているのかもしれませんね。


終わりに

職場での上司の何気ないひと言から、
「もしかしてこれって、意外と多くの人が誤解しているかも…?」と思い、
今回はこの記事を書いてみました。

読んでくださった方にとって、
少しでも「なるほど」「ちょっとクリアになったかも」と思っていただけたら嬉しいです。

楽典と音楽理論、それぞれの学び方についても、
今後、少しずつ自分のペースで書いていけたらと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いします。

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